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グッドデザイン賞は、1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みです。デザインを通じて産業や生活文化を高める運動として、国内外の多くの企業やデザイナーが参加しています。これまでの授賞件数50,000件以上にのぼり、授賞のシンボルである「Gマーク」は、よいデザインを示すシンボルマークとして広く親しまれています。

 

この度、キャンプ場・北軽井沢スウィートグラスを運営する「きたもっく」が5000件の応募の中からグッドデザイン賞において、金賞を受賞した。

 

授賞対象の背景

 

北軽井沢は豊かな自然環境に恵まれているものの標高1,000m以上に位置し、冬は寒さが厳しいにも関わらず雪が少ないため、観光業をはじめ通年での事業継続が難しく冬は休業する事業者が多い。そのため季節雇用に頼らざるをえず、安定した雇用が地域に生まれず、若者や移住者も少ない。また中山間地域で森林資源はあるが、建材や家具材としては品質にばらつきがあり木材価値が低いとされる広葉樹が多く、林業従事者がいない。別荘地には倒木や伐期を迎えた木も残され、耕作放棄地も多い。地域の未来が持続可能で豊かであるためには、地域特有の自然条件に従い、自然と人の間に適切な関係を育むことが重要である。厳しくも豊かな自然をひとつの制約条件として位置づけ、クリエイティブに地域資源を価値化していくことだけが、この地の未来創造に繋がる。価値がないとされた地域資源に光をあて、それらを活かす場を自らつくるしか未来創造への手段がなかった。

 

経緯とその成果

 

活火山浅間山が生み出した特徴的な自然環境の魅力を伝えるため、1994年にキャンプ場を開業。厳冬期でも居心地の良い空間を創るべく、全宿泊施設に薪ストーブを設置。キャンプといえば夏という固定概念を払拭し、冬も事業を継続、安定した雇用を生み出す。2015年、回収した地域材を活用して薪の製造を開始。2019年には地域山林を取得し自伐林業に着手、地域資源の生産加工を本格化させた。山から伐り出した木材は主に薪となり、宿泊施設の建築材や家具材としても活用している。遊休山林や耕作放棄地では植生循環を促す養蜂にも取り組み、地元農家や地域企業との協業で蜂蜜加工品の企画販売も活発化。アーボリカルチャーに基づく森林整備も組み合わせ、自然と人との持続可能な関係づくりを実践している。1,2,3次の様々な事業展開は多くの仕事を創出し、新卒の若者からセカンドキャリアの高齢者まで、地元、移住者を含め幅広く雇用している。


仕様

 

240haの自社山林と3万坪のキャンプ場を核に浅間山北麓で多種多様な事業を展開。薪などの木質エネルギー供給や薪ストーブの施工販売、樹木ケア等については浅間北麓から半径35km圏内を対象としている。キャンプ場をはじめとするフィールド事業は首都圏を中心に全国からの集客を果たし、事業全体では地域住民から観光客まで幅広く利用され、雇用や協業などにより事業の循環に関わる範囲は多岐に渡る。

 

審査委員の評価

 

よく「農林水産業」と一口に言うが、農・林・水、それぞれの抱えている問題は異なる。特に林業はあらゆる点で厳しさに直面しており、新たな発想、そして仕組みの考案が必要な状態だ。群馬県北軽井沢で人気キャンプ場を営む「きたもっく」が始めた循環型林業は、補助金や助成金に頼りがちな林業において、新たな光となる可能性を秘めている。海外から輸入した薪割り機をはじめ、製造する薪や建築資材の端材を燃料とするバイオマス木材乾燥機などを自社で導入。遊休山林の利活用を行いながら、品質の高い薪や建材を製造すると同時に、林業分野の収支を黒字化させている。また企業研修施設「TAKIVIVA」を新設するなど、さまざまな角度から山間地域の将来を考える取り組みを行なっている。もちろん、この企業が地域に根ざした活動を長年行ってきたことも評価のポイントになった。

 

グッドデザイン賞は、かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものをデザインととらえ、その質を評価・顕彰している。

「きたもっく」は、「地域資源の価値化」と「人と自然がつながる場づくり」で、地域の未来を自ら創る事業、という全取り組みで応募した。

 

見事、金賞を受賞した「きたもっく」を誇りに思うと同時に、その中にいる一人として喜びも人塩である。

 

今朝は、浅間山に二度目の冠雪があった。一度目よりも雪は多くずっと麓まで積もった。

まるで秋を通り過ぎて冬が到来したような寒さが続く。