北軽井沢 虹の街 爽やかな風

「最後は緑豊かな自然の中で心豊かに暮らしたい」という妻に従う形で移住生活を始めた場所は、活火山浅間山北麓に位置する標高1100mを超える厳寒の地。 北軽井沢スウィートグラスというキャンプ場で働きながら最後の人生を謳歌している。一人の老人が経験する出来事をそのまま書き記していきたい。

2012年03月

この四月、まだ春浅いオランダを旅した。アムステルダムから、白いライラックの花の間をぬって、列車は古都ライデンに着く。私は友人の勤めるライデン大学医学部を訪れ、足を延ばして、研究で知り合った友人の家を訪問した。
十八世紀に建てられた古い家並みの間を運河が流れるライデンは、日本に蘭学を伝えたシーボルトの生地である。折しも日蘭交流400年を記念したシーボルト展が開かれていた。
大学のメディカル・センターは、この美しい古都に似合わず、まるで殺風景な工場のように巨大な姿を曝している。臓器移植を含め、ヨーロッパの先端医療の中心地の一つである。そのアンバランスが心に引っかかった。
友人は、そこからさらに西に三十キロほど行った北海に面した町の自宅に私を案内した。なんという美しい田園風景であろうか。見渡す限り、まるで短冊のように緑のライ麦畠が続いている。国土の40%が海面より低いこの国の農地は、干拓された土地に運河が縦横に引かれ、まことに美しい田園風景を作り出している。
友人の家は、白と紫のヒヤシンス畠の向こうの、小高い丘にあった。花が満開になると、ヒヤシンスの香りに包まれるという。
「素晴らしい自然ですね」と言うと、友人は、間もなくこの美しい風景がなくなるのだという。もともとこの丘は、北海から吹き寄せられた砂で出来た砂丘だった。そこに黒い土を入れて家が建ち、ヒヤシンス畠が作られた。それを砂丘に戻すのだという。
オランダでは、人工的に作った自然をもとの姿に戻すという運動が盛んになっている。川も海岸も人間が変えてしまった。それを原形に戻す。少々の犠牲があっても、それに堪えなければならない。随分強引な運動だが、友人は無条件でそれに従うという。
当面の自分の利害ではなく、自然に戻ることを優先する。友人のこの考え方に、私は動かされた。それに比して、日本の公共事業の現状はどうだろうか。
 
         多田富雄 著  「懐かしい日々の想い」より
 
私の住む現在の場所も、開発されて作られた場所だ。地元の人の話によると、人もめったに入れないような場所だったらしい。時折、その姿を確認されている熊は、もともとこの地を住みかにしていたに違いない。しかしここは、出来るだけ自然のままという考えで開発されていて、道路も直線ではなく蛇行していること、また、建築物以外の場所は自然のまま残されているということにちょっと救われた気持ちになる。車の音もめったに聞くことがなく、人に出会うことの少ない自然の中で暮らすと、心がゆったりとして落ち着くものだ。自然を大切にしたい。
今日で3月も終わる。今朝の気温は5℃、天気は曇から雨になった。明日はまたマイナス8℃になるという。雨も雪に変わりそうだ。春はもう少し先になりそうだが、着実に近づいている。
 
 

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21日から始まった春の選抜高校野球は、連日熱線を繰り広げている。そして、いよいよプロ野球も開幕した。桜の開花予報も話題になり、まさに「春」到来の気分が高まる中、北から南へ長く延びる日本列島の全ての学校では卒業式を終え春休みとなっている。3月に卒業という経験をした少年少女たちは4月には新しい気持ちでスタートを切る入学式が待っている。そのころには多くの場所で桜の花が満開となり、希望に満ちた若人達に微笑みかけることだろう。
 
北軽井沢スウィートグラスでは、春休みをキャンプで楽しむ若い家族で賑わっているが、キャンプカーで訪れる老夫婦を見つけた。芝生の上はまだ雪解け水で湿っているが、火を熾しバーベキューを楽しむ姿は微笑ましい。広島にいる旧友のG君は、リタイアしたらキャンピングカーを手に入れて全国を巡るのが夢だと語っていた。今頃どうしているか、物静かな老夫婦の姿にG君夫婦がほのかに思い出される。
 
先日は、年に10回以上もここを訪れるという「ちいまめ家」の家族に会った。私の姿を見つけるとにこやかに話しかけてくれる若いカップルはいつも笑顔で清々しい。小学校4年生のお~ちゃんは来月から5年生、弟のあ~ちゃんはピッカピカの1年生になる。二人ともキャンプ好きの両親に恵まれ大自然のなかで思う存分自由な時間を楽しんでいるようだ。この家族は、夏だけでなく「冬のキャンプ」を何よりの楽しみにしているようで、気温が氷点下10度を超えても、テントの中で暖をとる工夫をしているが、このような体験を幼い頃に出来る子供は少ないだろう。この子達はきっと将来、自分の子供をキャンプに連れてくるに違いない。金さえあれば何でも手に入る世の中で、不自由な経験をすることは貴重だ。そして何よりもこの自然が素晴らしい。
 
私たちの孫娘もいよいよ中学生。そして、北軽井沢の孫息子は幼稚園に入る。希望に満ちた明るい話題で一杯の春は、すでにすぐそこまで来ているが、北軽井沢の今年の雪は深く、冬眠中の熊も、この状態ではまだ目が覚めないに違いない。桜前線を帯同して春休みはもう少し続く。
 
 

昨夜は楽しい会合があった。嬬恋の長男、次男の家族に弟を交えての夕食会が「あやめ亭」であったのである。あいにく妹の都合が悪く顔を見られなかったのが残念だったが、いつものように楽しく旨い酒にわが細胞も歓び、笑い、また一つ長生きの薬をもらったようだ。
 
彼等はそろってパルコール嬬恋でスノーボードやスキーを楽しんだ後に温泉で疲れを癒すという、贅沢な時を過ごしたばかりなのでそれぞれご機嫌の顔であった。
しかし、話題はもっぱら私の車が赤い色になった事に集まり、ほどよいアルコール効果も手伝って、まんまとみんなの誘導尋問にかかってしまった。ポロリ、ポロリと話しているうちに、ついに何十年も前の話まで話題が溯り、してやったりと長男を喜ばすはめになったが、それはそれでまた自分にとってもよい酒の肴だったに違いない。
 
良薬口に苦しというが、酒は百薬の長。酒は人間にとって素晴らしいパートナー。ゆったりとした気分で飲めば、ストレスを解消し、心を安らかにしてくれる。どんなネタでも旨い酒の肴にする技術を身につけるまでに、どれほどの時間と酒量を要したか分からないが、昨夜のように、気心の知れた相性のいい仲間と飲む酒は、その種類が何であれ、これ百薬の長に違いないのだ。
赤いPolo の秘密も、そのうちに告白することになりそうだ。
 
 

家庭画報4月号の冒頭で、「日本文学研究者ドナルド・キーンが愛する日本・心の美」という文に出会った。
 
儚さに美を見出すことでは日本人は世界でも特別です。
すぐ散る桜への詩情はその代表例でしょう。
西洋にある大理石の宮殿は永遠の美を目指したものですが、日本の木造建築はそうではありませんでした。
日本では美に永遠を求めず、むしろ、時の流れがもたらす変化を受け入れました。
物事の移り変わりの中に浮かんでは消える、陽炎のような儚さを美と認めた感性こそは日本文化の粋といえるでしょう。
 
自然に学び、自然に従うライフスタイル「ルオム」を提唱している北軽井沢スウィートグラスの若いスタッフのミーティングに参加し、久しぶりに事業を推進する熱い息づかいを感じた。
南北に長くのびる日本列島に桜の開花予想の声が聞こえてきたが、北軽井沢に桜が咲くのはまだ先のこと。今日も朝から雪となり、黒い土が見えてきたキャンプ場も再び白いベールに覆われた。
それから夕方には雨となり、めまぐるしく変化する天気と気温に春の訪れを感じている。
 
浅間山の麓に広がる大自然の中で展開されるキャンプ場経営は、昨年日本一の人気を獲得したが、若いスタッフ達は、新しく提唱された経営戦略「ルオムブランド」確立のために邁進している。
その片隅に身を置きながら、少しでも力になれる機会が与えられているという事は、自然の中に住まいを構え、別の意味で自然と折り合いをつけながら生活している自分にとっても、一つの励みになっているに違いない。
 
 

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今日は春分の日、彼岸の中日である。彼岸は春彼岸と秋彼岸があり、毎年春分の日と秋分の日をはさんで前後3日間合計7日間をいい、それぞれの初日を「彼岸の入り」、終日を「彼岸のあけ」という。そして春分の日と秋分の日を「お中日」という。春分の日と秋分の日は、太陽が真東から上がって真西に沈み昼と夜の長さが同じになる。
 
仕事場で同僚のSさんは、春の彼岸の入りは、何故かよく雨が降るといい、今年もやはり雨が降った。そして、彼岸にはぼた餅を食べると話していたが、調べてみると、春は牡丹の花にちなんで牡丹餅といい、秋は萩の花にちなんでおはぎというらしい。
 
6日ぶりの休日の朝、マイナス13℃と冷え込んだ。日課のマッケンジー体操と腹筋・背筋運動をこなし、ちょっとサボっていたストレッチを少し入念にやる。やはりストレッチで筋肉を伸ばすと気持ちいい。相変わらずリスと小鳥たちが次々に訪れているが、最近ちょっと見慣れない鳥のカップルがやって来るようになった。餌の量も3カ所にたっぷりやっているので5kg入りの袋もすぐになくなってしまう。しかし、その餌のおかげで思いがけない経験ができている。
 
村役場から月に一度届く広報は、いつもざっと目を通すが、このたびは、「広報つまごい」の他に「第5回嬬恋高原キャベツマラソン」「認知症予防の虎の巻」が同封されていた。そして、よく見ると別途プリントされた2枚の用紙があり、それには65歳以上の方の介護保険料が新年度の4月から上がりますという知らせだった。その増額は約3割という。該当する表を見ると年額にして約1万8千円の増額だが、村では「高齢者温泉入浴事業」と「高齢者福祉タクシー事業」のサービスを拡大したという。
 
嬬恋村では高齢者の健康・福祉増進のために、65歳以上の人に一冊50枚綴りの温泉券を7500円で販売している。すなわち1回150円で温泉に入れるわけだが、それが4月から5000円に改正され、100円で温泉が利用できることになる。年に3冊の制限があるので、一年に150回までという限りがあるが、1回100円で150回温泉に入れるという有難い話しだ。
 
私たちはこの温泉券をすでに有難く利用しているが、「高齢者福祉タクシー事業」というのは初耳である。これは65歳以上の世帯で車を運転できる人がいない人に対する助成で、その上限が2000円から4000円に改正される。これはタクシーの初乗運賃(710円)と追加運賃の半額を助成するというもので、例えば三原から田代までタクシーを利用して5010円かかった場合、全体運賃5010円―初乗運賃710円=追加運賃4300円となり、この追加運賃4300円の半額と初乗運賃710円が助成される。すなわち4300円÷2+710円=2860円が助成されるのだ。利用は月に4回までだが1回につき4000円まで助成されるというのだから対象者には有難い制度である。
 
ランチシェフはもうプロ級?になったチャーハンを作る。その後久しぶりにホテルグリーンプラザにある奥軽井沢温泉あさまの湯へ出かけた。私の家からはホテル1130の鬼押し温泉へ行くのも、グリーンプラザへ行くのもほぼ同じ距離だが、グリーンプラザは午後12時から3時マデという制限があるので、アルバイトが休日の日しか利用できない。介護保険料が値上がりすると言う知らせが、温泉入浴料1回100円になるという知らせとセットでやってきたため、介護保険料値上がりという嫌な気分が半減する。それに自分は該当しないがタクシー料金の助成ということも重なって、なんだか得したような気分になるから、人の心理は面白い。結果的には温泉券の値下がり分が介護保険料の値上がり分の半額になるので、納得?の気分にならざるを得ない。
 
露天風呂で少し冷たい風も心地いい。説明文を読むと、ここの源泉は75℃と高温のため井戸水で薄めているという。透明の湯は少し濁り湯の鬼押し温泉とは少し感触が違う。ヌルッとした肌ざわりが温泉らしくて快感だ。今日は、極楽・極楽のお彼岸中日であった。
 
 

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